この度の豪雨により被害を受けられた方々にお見舞いを申し上げます。
実は、私も今回は家族で娘のところに避難しました。
5年前まで広島には台風もほぼ来ないし、瀬戸内海の温暖な気候に恵まれて、災害のない地域だと過信していました。しかし自然には私たち人間にとって獰猛な側面もありますよね。新型コロナウィルスもそうですが、自分たちの身を守る行動の大切さを改めて感じています。
身を守る行動を起こすために、土台となる健康の重要性も強く感じるようになりました。心も体も健康だからこそ、自分自身も大切な人も守るアクションを取れますよね。危機的な状況ではなくとも、日々の幸せを感じるためにも健康は本当に大切です。
健康に必要なものとして「運動・食事・睡眠」の3つがあります。今回はその中でも睡眠についてお話しします。
アマゾンCEOも8時間睡眠で頭脳の明晰さを保っている
「アマゾン創業者のジェフ・べゾス氏も8時間は眠る」という記事を読みました。世界的巨大企業のCEOである彼が8時間眠る理由は、高い集中力を持って仕事に取り組むためとのことでした。
彼は慢性的に睡眠不足でしたが体調を崩し、睡眠時間を増やす生活に切り替えたそうです。「注意力が高まり、思考が明晰になります。8時間眠った日は、ずっと調子がいいですね」と彼は話していました。
世界トップレベルの成果を出しているアマゾンのCEOでさえも、睡眠時間の確保によって体調も頭脳も良い状態になっていると聞くと、睡眠と仕事効率の関係性は無視できなくなりますよね。
睡眠の主な機能としては、疲労回復・脳のデトックス・記憶や情報整理などがあります。体力の復活、思考力・注意力の高さ、記憶力、発想力などに関連する機能ですので、私たちが良い仕事をするために極めて重要なものです。
そういえば、電通が「健康に働くための指標」を開発するために、全国1万人の会社員を対象(2018年9月4日)にしたウェルビーイング(バイタリティー度)調査結果を出しています。その結果のひとつとして、「平均8時間睡眠を取るのが最もウェルビーイング度が高い」とありました。
ちなみに「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念です。日本語には「幸福」と翻訳されることが多くあります。
睡眠と身体的、精神的な良好さの関係はすぐにイメージできると思います。よく寝られれば体は元気だし、体が元気だと精神的にも上機嫌になりやすいですよね。もうひとつある「睡眠と社会的に良好な状態」の関係は、睡眠不足で体調が悪くて気分がすぐれないと、他者に思いやりを持てなくなったりするようなイメージです。人間関係が良好であれば、幸福感を感じやすいことは想像できると思います。
疲れていて心も体も元気がないと、ついつい自分で精いっぱいになってしまい、コミュニケーションも粗いものになりがちです。そういった意味で8時間睡眠とウェルビーイングは、身体的、精神的、社会的なつながりをもっています。
メンタルヘルスの現場から。8時間睡眠は本当に無理?
良質な睡眠は、健康に働き、生産性を上げ、そして何より幸福になるために必要なもののようです。しかし「8時間なんて無理!」という方が現代は多いように思います。長時間労働に加え、帰宅後にやりたいことをやっていると、あっという間に時間は過ぎていきますよね。そこで、8時間は目安として捉え、睡眠の重要性について今一度考えてみてもらいたいと思います。
私は様々な企業で、メンタルヘルスの専門家として面談を行っています。みなさんそれぞれ状況が違うので一概には言えませんが、以前よりも睡眠不足の方が多いように感じています。睡眠不足になる理由としては、「なんとなくテレビを見ていて」「ゲームやネットをやめられない」という声を面談で聞きます。みなさん頭では「睡眠は大切だ」とわかっているのです。でもやめられない。これが課題です。
ですが、オンとオフを切り替えるため、好きなことに没頭することは良いことです。没頭することは幸福度の向上に関係しますから、好きなことに打ち込む時間はとても大切です。しかし睡眠時間を極端に削り、いつまでもやり続けるのはNGです。理由は、人生の楽しみが減ってしまうような、恐ろしい変化が3つも脳に生じるからです。
ゲームやネットは“ほどほど” が良い理由
脳内で起きる3つの変化をお伝えします。
1.前頭前野(社会性や理性を司る)の機能低下
2.脳が過剰反応。ゲームの画像を見ただけで前頭前野に強烈な反応が起こる
3.報酬の欠乏、一定の刺激では満足できなくなる。
どれも恐ろしい変化です。他にも、日常生活から受ける様々な刺激に対する反応も鈍くなっていくようです。もちろん仕事にも悪影響が生じてきます。生産性の低下、ミスが増える、同僚と疎遠になる、職場に対して不満が増す、疲れやすくなる、病欠や遅刻が多くなる・・・。悪影響が出ている人を想像してみると、仕事が全然終わらないのに、ミスが多くて、誰とも関わらないで、いつも文句を言ってて、すぐに疲れていて、休みがちで、遅刻もする・・・。どうでしょう?こうはなりたくないですよね。
また、ネット依存の期間が長くなればなるほど、脳の損傷と萎縮が進んでいくこともわかってきています。無意識でネット依存になっているケースもあります。対処法としては「この時間になったらやめる」ということを決めることです。
誤解していただきたくないのは、仕事の後に好きなことをやるのはとても良いことです。仕事以外にも楽しくて面白いことはたくさんあります。人生を楽しむために、好きなことをやるのは本当に素晴らしいことです。
私も仕事のあとに読書をしたり、愛犬と散歩にいったり、行きたい旅行先の画像を見たりしてプライベートの時間を楽しんでいます。ですが、仕事への悪影響が大きすぎると、生活にも悪影響が出てきてしまいます。現実的な話として、日々の生活には仕事をすることも重要です。仕事に良くない影響が出過ぎてしまうことは避けるようにしたほうが、安心して好きなことに打ち込む時間を確保していけると思います。
あなたの睡眠スタイルを見直して改善しよう
家に帰ってからの過ごし方、睡眠について考えてみてほしいと思います。心と体の健康、つまり幸福にも大きく関わってくるからです。コロナの影響で外出する機会が少なくなった今こそ、生活リズムの改善に取り組みやすいチャンスです。オンとオフの切り替え、自分の好きな時間を過ごしたあとは、明日の自分のために良質な睡眠をとりましょう。
5年後のあなたが、今のあなたに声をかけるとしたら、どんな言葉でしょうか?毎日は小さな選択の積み重ねです。今のあなたの幸せ、未来のあなたの幸せ、どちらも満足していけるように毎日を過ごしていきましょう。あなたのメンタルも身体も、幸せな時間を過ごしていくために大切にしていきましょうね。