第1回メンタルタフネスフォーラム振り返り 【シャープ福山セミコンダクター株式会社 総務部長 千田さん・大舘さん編】

森田先生01

こんにちは、森田由美子です。

第1回メンタルタフネスフォーラムでご登壇いただいた、シャープ福山セミコンダクター株式会社の総務部長 千田さんと、同じ部署に所属されている大舘さんのお話を振り返っていきます。筑波大学准教授の大塚先生と、事例発表をしてくださったアンデルセングループの執行役員 総務部長 中島さんのポイントの振り返りはコチラからどうぞ。ピョートルの講演と対談の振り返り記事をご覧になりたい方は、コチラからどうぞ。中国新聞社で産業医をされている水津先生の振り返りはコチラをどうぞ。

テーマ:『世界基準のメンタルの醸成~個を高め組織を強くする~』

シャープ千田さま01

千田さんは、会社で取り組んでいる人材育成の活動についてお話しくださいました。目指すは「世界基準のメンタルの醸成」です。そのゴールに向かって、社内の仲間たちが動き出し、私もお手伝いをさせていただくこととなりました。千田さんが発表の最後に、今回発表した取り組みをまとめてくださっていました。その3つをもとに、千田さんと大舘さんのご発表のレポートを書いていきたいと思います。

  1. 2つのエンジン
  2. 仲間をふやす
  3. 夢と情熱をもってやると必然的に仲間が集まってくる

1.2つのエンジンとは?

2つのエンジンとは、『メンタルヘルス』と『メンタルタフネス』とお話されていました。ある日、千田さんから「これまでのメンタルヘルスとは違う、もっと個人も組織も元気になる取り組みをしたい」とご相談がありました。

ご相談のきっかけとなったのは、ストレスチェックの結果でした。ストレスチェックの結果から読み取れたことは、「個人はバタバタしているけれど、チームワークは良い」という結果だったそうです。各人それぞれ大変なことがあるけれど、チームとしての関係性は良い、ということですね。つまり課題としては「個人のストレスに対してどう対処していくか?」という点がある。そして、会社に資源として存在しているものは「仲間で支えあうことができる」という点があったわけですね。

シーズポートのストレスチェックでは、まさにこの「課題と資源」を表した『仕事の要求度―資源モデル(JD-Rモデル)図1』を用いて結果を表示しています。『仕事の要求度―資源モデル』は、仕事のネガティブな面だけでなく、ポジティブな面にも注目したものです。

JD−Rモデル

筑波大学の大塚准教授はJD-Rモデルについて、こんなご意見を持ってらっしゃいます。

「職場のメンタルヘルス対策においては、うつ病などの予防や早期発見・早期治療などが重要なことは言うまでもないが、WHOの健康の定義でも認められるように、単に職場において疾病が存在しないというだけでは、今後の職場のメンタルヘルス対策としては不十分になる可能性がある。労働者一人ひとりのwell-beingを実現するためには、JD-Rモデルのように、労働者のパフォーマンスの向上を説明するためのモデルを活用した職場のメンタルヘルス対策を行うことも今後必要になるであろう(産業精神保健 20巻3号から抜粋)」

と述べていらっしゃいます。

千田さんから状況を伺い、私たちが普段取り組んでいる「メンタルヘルス」と「メンタルタフネス」の『2つのエンジン』をベースに、強みを活用したメンタルタフネスのプログラムをご提案しました。目的は、不調者のケアとともに、今ある仕事の資源を活かして、生産性を上げていくことです。具体的には、千田さんが発表してくださったように、全社員約1,300人を対象にグループに分けて『メンタルタフネストレーニング基礎』を行うことになりました。プログラムのポイントを、パフォーマンス倍増のキーワードとされている「SHARP」と「自分軸」「強み」「心理的安全性」に設定し、プログラムをスタートさせています。

2.仲間を増やす

始めるにあたって、関係者の理解を得られるまでにご苦労もあったそうです。スタートするまでには、ストレス耐性をつけることの重要性や、メンタルヘルスとメンタルタフネスの違い、さらに2つのエンジンをまわすことで、従業員が活き活きと働けることにつながることなどを、関係各所に伝えていったとお話されていました。

労働組合の委員長に、千田さんの構想を相談したところ、「前例がないけど、組合も会社も変わっていかなければならない。旗を振っていきたい」と快諾してくださったそうです。千田さんの言葉をお借りすると、「自らの旗を振り上げてくれた。そこから勢いにのって、シャープ福山アカデミーを開講した」とお話されていましたね。社内にアカデミーが開講した理由は、プログラムが単発的に終わってしまうのではなく、継続した取り組みをしていくことが目的だそうです。短期・単発ではどうしても成し遂げにくいこともありますので、長期的な視点で実行していける仕組みを作る力は、本当に素晴らしいことです。

「また研修やるの?」と当初は言われていたが・・・

シャープ大舘さま

継続という視点については、実際に現場を動かしてきた、総務部の大舘さんがお話してくださいました。苦労した点として、仲間づくりの話がありましたね。「忙しいのに、またメンタルヘルスの研修を就業時間中にやるの?」といった、現場からの厳しい声も当初はあったそうです。しかし大舘さんは「タフネスをやりたい」という気持ちを、組合や社長に伝えていくことで、徐々に仲間を増やすことができたそうです。

シャープ福山セミコンダクターには、2人の強みアドバイザーがいます。大舘さんと三木さんという方です。『メンタルタフネス基礎トレーニング』を全社員が受けた後、そのフォローをするために2人の強みアドバイザーは動き始めました。以前から社内で実施されていた「職場懇談会」に出前講師として、強み発見カードワークを開催しはじめたのです。今も継続的に実施されているようです。変化を起こすためのアクションを継続することは、本当に素晴らしいことですよね。

心理的安全性につながるアイスブレイク

カードワークの前に、強みを理解しやすくするための工夫もされているようです。「職場の仲間に伝えたい感謝」「子供の頃の自分の自己開示」などの、ちょっとしたアイスブレイクをいれて、自己開示の場を作っているそうです。普段は仕事の話ばかりのところが、「最初は照れるけれど、話しているうちに打ち解けてきている」「普段怖い部長も笑えるんだと思った」「変わることができた」といった感想が聞かれたそうです。

これは心理的安全性が醸成されていく過程といえます。この職場懇談会、聞くところによると、どんどん需要が増えているとのこと。当初は「また就業時間中に研修やるの?」と厳しい声があったことを考えると、確実に浸透してきていますよね!大舘さんと三木さん、2人の強みアドバイザーの活躍の場が増えていることも、私はとても嬉しく思います。

3. 夢と情熱をもってやると必然的に仲間が集まってくる

夢と情熱。千田さんと大舘さんの話しぶりからも伝わってきました。千田さんが何度も口にしていた「妄想癖」という言葉。あれが実は「夢と情熱」なのだと改めて思いました。アカデミーではタフネスの強化を今後も図っていくとともに、福山スポーツ&コミュニティによる、社員だけでなく地域の人も仲間に入れた取り組みが行われています。様々なところと協力をして、さらに仲間がどんどん増えていきそうな予感がしますね。

大舘さんは、強みアドバイザー養成講座の最終日に、「自分が何を目指すか」というテーマの発表でこんなことをお話されていました。「全社員に強み診断をしてもらって、強み発見ワークをする」と。当時の大舘さんにとっては、かなりの大風呂敷を広げたとのことでした。「今までの自分だったら、思うだけで実現までたどり着けなかったのが、自分の強みが理解できたことで動くことができている。自分の夢の実現に向けて取り組みたい!」と力強く話されました。

上司に言いたいことが言えない理由がわかった!

また、以前の大舘さんだったら、上司である千田さんの前に行くと、自分の言いたいことが言えなかったそうです。しかし、強みを学んだことで、今は変化が起きているようです。千田さんに自分の意見を言えるようになっているとのこと。それは、千田さんの強みが「育(はぐくみ」で、その裏強みが「圧(あつ)」と知ったからです。

千田さんは千田さんの思いを熱く伝えてくれているけれど、「あ、ちょっとこれは裏が出ているのかな」と大舘さんが自分で気付けることで、強い言葉を向けられたときも、気持ちが楽になったそうです。「育(はぐくみ)」の強みは、相手を何とかしてあげたいという気持ちが強く、時にそれが、相手にとってはプレッシャーに感じられたりします。けれど、その強みの特徴が分かっていれば、プレッシャーだとは感じず、「この人は自分のことを思ってくれているんだ」と思えますね。

当日の発表は、限られた短い時間の中で、千田さんから大舘さんにバトンがわたり、そして最後に千田さんがまとめあげる、という連携が見事でしたね。お二人の会話も軽妙な中に温かさがありました。お二人がこれからさらに仲間を増やし、シャープ福山アカデミーの可能性を広げていかれることと思います。

ありがとうございました。

(注:役職や所属は2019年11月時点のものとなります)

第2回メンタルタフネスフォーラム に向けて

今回で、第1回タフネスフォーラムの【振り返りシリーズ】は終了です。メンタルヘルス、メンタルタフネスに関する情報や、私たちシーズポートが経験から学んだ事例などは、随時ホームページやブログなどで発信していきます。個人も組織もメンタルをタフにしていくことで、心理的安全性、充実感、生産性などを向上させ、働きやすい職場を作っていける支援をこれからも継続していきます。ご相談などがありましたら、お気軽に声をかけてくださいませ。

フォーラムに参加してくださったみなさん、おかげさまで良い時間を作ることができました。ありがとうございました。第2回メンタルタフネスフォーラムも開催できるようにがんばります!

 

それでは、今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました!

今日も明日もタフにいきましょう〜

 

森田由美子