第1回メンタルタフネスフォーラム振り返り 【筑波大学准教授 大塚先生・アンデルセングループ 中島様 編】

第1回メンタルタフネスフォーラム森田講演

こんにちは、森田由美子です。

今回は、第1回メンタルタフネスフォーラムで登壇して頂いた、筑波大学准教授の大塚先生と、事例発表をしてくださったアンデルセングループの執行役員 総務部長中島さんのポイントを振り返っていきます。前回のピョートルの振り返り記事をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。

筑波大学准教授 大塚泰正先生の講演

ワーク・エンゲイジメントとは何か?

大塚泰正先生講演01

大塚先生は『強みを活用したワーク・エンゲイジメントの高め方』というテーマで講演してくださいました。「そもそもワーク・エンゲイジメントは何なのか?」という定義からスタートでしたね。大塚先生が定義してくださったワーク・エンゲイジメントは、

ワーク・エンゲイジメントとは何か?

「仕事に関連する、ポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる」

というものでしたね。そして、ワーク・エンゲイジメントの特徴として、「自分が携わる仕事に付随して発生、感情と認知を含む、持続性あり」ということでした。例として、「壁にぶち当たったときでも、これには意味があるという認知ができる。意味を見出すことで行動をさらに活性化させることができる」ということでした。

認知を変える大切さ

私もカウンセリングやコーチングなどの場面で、同じ物事が起きても、人によって違う認知をするものだと感じることがよくあります。認知を変える関わりを少しするだけで、その方の表情が「えっ!?」「ホッ」としたように変化することがあります。

たとえば、上司はよくやっていると評価しているにもかかわらず、当人はダメだと思い込んでいることが結構あります。評価して(褒めて)もらっているけれど、それを真っ直ぐ受け取ることができない。自分の良いところが理解できていないわけですね。

ワーク・エンゲイジメントをストレスチェックの尺度に入れる

ワーク・エンゲイジメントは、大塚先生もご紹介くださった『新職業性ストレス簡易調査票』の中に尺度として入っています。私たちシーズポートのストレスチェックでは、大塚先生に監修いただき、この「ワーク・エンゲイジメント」の項目が入っている新職業性ストレス簡易調査票をお勧めしています。大塚先生にご提案いただき『仕事の要求度―資源モデル』にストレスチェックの数値を入れているものです。「仕事の負担度と個人・組織の資源が、アウトカムにどういった影響を与えるのかがわかりやすい」とのコメントをいただきます。

私は、カウンセラーとして活動し始めたときに、ネガティブな要素に目を向けることはもちろん大切だけれども、それだけでは組織の元気につながらないのでは?と感じていました。そこで、組織の元気を生み出す方法論として、強みや解決志向といったことを考えてきました。

大塚先生が強みを活用したワーク・エンゲイジメントの高め方として、2つの研究を示してくださったことに「これでいいんだ」と自信を深めることができました。そして何より、「もっとお役に立てるものを」という気持ちを強く持ちました。

個人の強みを知り、その強みの活用を支援する組織へ

大塚泰正先生講演02

大塚先生の最後のまとめは、組織マネジメントの大きな指針となったことと思います。

「個人が強みを活用すると、ワーク・エンゲイジメントが高まる。しかし、強みをただ知るだけではだめで、活用することが重要。強みを活用していくことが個を生かし、そして、組織が強みの活用を支援していると、そこで働く従業員のワーク・エンゲイジメントが高まる。組織が従業員の強みに関心を持ち、強みを活用することを経営戦略の一部に取り込もう」というまとめでした。

ワーク・エンゲイジメントを高めることは、現代の組織の大きな課題のひとつだと言われています。組織を表す指標は様々ありますが、私たちシーズポートが関わらせて頂く組織では、個人の強みを活用していくことで、今まで以上にワーク・エンゲイジメントが高まるように関わらせていただいています。(現在メンタルタフネスプログラムのリニューアル中です。ご興味ありましたらお気軽にご連絡くださいね!)

10年後も元気に仕事をしよう!

大塚先生から「活力=森田由美子」と言っていただきました(笑)。仕事をしていると、立場や役割は色々ありますけれど、忍耐力や我慢が必要だったりすることはあるものです。それでも、関わる人から「ありがとう」と言ってもらえたり、笑顔で話しかけていただく関係を作れたり、高いハードルをみんなで乗り越えたり、自分の強みを意識的に発揮できることは、仕事の楽しみであり醍醐味でもあると感じます。10年先も「活力=森田由美子」と大塚先生に笑いながら言っていただけるよう、ワーク・エンゲイジメントを自ら高めていこう!と思いました。

アンデルセングループ中島さんの事例発表

2人の強みアドバイザーが社内でワークを展開

中島さんには、『強み発見ワークの活用事例 職場でのコミュニケーション促進を目指して』というテーマで発表していただきました。アンデルセングループには、強みアドバイザーの資格ホルダーがおふたりいらっしゃいます。強みアドバイザーは社内で2人以上いると動きやすくなるので、養成講座をご案内する際も、「2人以上いると支え合えるし、活動も分担できるので社内で動きやすくなりますよ」と声をかけさせていただいています。アンデルセングループさんでは、中島さんと鉄田さんのおふたりが、社内で『強み体感ワーク』を展開されています。

ストレスチェック結果をもとに、職場環境改善のひとつとして活動

アンデルセン中島さん講演01

強み体感ワークは、ストレスチェックの集団分析の結果をもとに、活動をスタートさせたものです。「職場でのコミュニケーションが足りていない」といった事例があり、職場環境改善の一環として、コミュニケーションの促進を図ることを目的に取り組まれています。

研修を開催するときは、どの会社も同じことですが、現在はどの部署も仕事に追われていて「教育する時間が取れない」や、「そんな時間があったら目の前の仕事を片付けたい」といった現実があります。しかし、その教育やコミュニケーションの時間を取らないことで、かえって大きな弊害を生んでしまっているケースが見られます。直近の仕事の成果と、長期的な仕事の成果のバランスを取りながら、成長する組織になる道を選択して欲しいと思います。

何より自分の強み・裏強みを使うのがうまい

中島さんは9ヶ所で、強み発見ワークを開催されたことを発表してくださいました。グループ会社内には、当然それぞれ個性や制約がありますし、ワークの時間を取ることも難しい。しかし中島さんは、各社の事情に応じて、ワークの時間ややり方を工夫されていましたね。

最初は不安があったことも率直にお話してくださっていました。「でも、2回3回とやっていくうちに、参加者の反応が温かいことに気付いた。背中を押してもらった」という言葉は、今から職場環境改善に取り組む方々の勇気になったことと思います。

中島さん講演02

きっと、みなさんも感じられたかもしれませんが、中島さんの「あの笑顔」で雰囲気を作っていき、グループを動かしていかれたのだと思います。しかしそれ以上に私が感じたことは、何より中島さんご自身が、自分の強みと裏強みを理解されているんだろうなあ、ということです。ご自身の使い方がとても上手なことが、今回発表してくださった成果につながっていると思います。

カードワークでは、参加者がお互いに強みを伝え合うワークがあります。中島さんご自身が、参加者としてカードワークを受けたときに、こんな感想を持ったそうです。「診断の結果で出た強みとは、違う強みを同じグループの人に言ってもらった。そのときに自分の強みが増えたと思えて、素直に嬉しかった。前向きな気持ちに変わった」と。ご自身がこういった実感を得られているところが、強みの使い方の上手さにつながっていることと思います。

私たちが『社内・強みアドバイザー養成講座』を作ったのは、社内で活動できる人がいるほうが、リアルタイムに会社の状況を判断できるし、良い変化を生み出しやすいだろうと考えたからです。

私たちのような外部の人間が動いていくには、それこそ制限があります。職場の環境をより良くしていくのに、社内にその役割を果たす人がいるというのは本当に大きな力になります。

20年近く前になりますが、メンタルヘルス対策を始めた頃に関わった企業の総務部長が「社内にこぎ手を増やしたい」とおっしゃり、労働組合の委員長は「とまり木を増やしたい」とおっしゃったのが、私の中に強く残っています。アンデルセングループさんでも、こぎ手が増えて、心理的安全性のある職場づくりを進め、活発なコミュニケーションが行われていく流れを作れるといいですね。

職場環境改善としてキャリア教育も

中島さんは本当にご自身の強みである「起(たつ・行動力)」を発揮されています。「この取り組みでコミュニケーションの効果が出て、職場環境改善としてグループでの研修、キャリア教育にも取り入れていきたい。ワークは短い時間になったとしても、組織的にやっていきたい。強みに関心を持つアドバイザーを1人でも多く増やしていきたい。基盤をきちんとしたい。自分を信じて、周りのメンバーをリスペクトして 風土として定着させていく」という言葉が実に力強かったです。

余談となるかもしれませんが、参加者からいただいた感想の中に「あんな素敵な人たちが作っているパンを食べたい!と思い、帰りにアンデルセンのパンを大量買いしました」というコメントがありました。広島アンデルセンは、2020年8月1日リニューアルオープン。楽しみですね〜!

専門家・先輩から学び、実践していく

今回は、大塚先生のワーク・エンゲイジメントに関する講演と、アンデルセングループでの中島さんの活動事例を発表の振り返りをしました。組織ではたらく人にとって、おふたりのお話は大きな学びがあったことと思います。特に、人事・総務に関わる方には、実務で取り入れることができる実践的な学びもあったことでしょう。ぜひ、今一度ノートやメモを見直し、小さなことでよいので社内で試してみてくださいね。

それでは、今回は以上です。

次回は、中国新聞社で産業医をされている水津純江さんによる「産業医の目線から見る強みの有効性」をテーマにした発表と、シャープ福山セミコンダクター総務部長 千田さんによる「世界基準のメンタルの醸成 〜個を高め組織を強くする〜」をテーマにした事例発表の振り返りをしていきます。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

今日もタフにいきましょう〜

 

森田由美子